「障害者雇用の条件が複雑でわからない」「法改正でうちの会社はどうなるのか?」 「あと何人採用すればいいのか、正確な数字を知りたい」
多くの企業の人事担当者や経営者が、2024年から2026年にかけて続く段階的な法定雇用率の引き上げや、算定ルールの複雑化に頭を悩ませています。障害者雇用は単なる「数合わせ」のフェーズを終え、経営戦略として取り組まなければ法的リスク(社名公表や納付金)とコスト増を招く時代に突入しました。
この記事で「障害者雇用の条件」を網羅的に解説します。「人数・対象者・時間」の3大基礎条件から、2025年4月の除外率引き下げ対策、新設された週10時間以上の算定特例、そして助成金を活用したコスト最適化戦略まで、実務に必要なすべての情報を徹底解説します。
【障害者雇用 条件】全体像となる3つの軸

実務上押さえておくべき「障害者雇用 条件」は、大きく分けて以下の3つに集約されます。この3つの条件がパズルのように組み合わさって初めて、「1カウント」として認められます。
| 条件の軸 | ポイント | 具体的なキーワード |
|---|---|---|
| 1. 企業側の条件 | 自社に義務があるか、何人雇う必要があるか | 従業員数、法定雇用率、除外率、常時雇用労働者 |
| 2. 対象者の条件 | 誰を雇えばカウントされるか | 障害者手帳の種類、障害等級、ダブルカウント |
| 3. 勤務時間の条件 | 週何時間働けば1人分になるか | 30時間、20時間、10時間の壁、特定短時間 |
まずは、それぞれの条件を詳細に深掘りしていきましょう。
【障害者雇用 条件 企業・人数】従業員数と法定雇用率のロードマップ

「うちは義務化の対象なのか?」「正確には何人雇えばいいのか民間企業の法定雇用率と義務化ライン
?」という疑問に対する答えは、2024年から2026年にかけて段階的に変化しています。
民間企業の法定雇用率と義務化ライン
かつての「2.3%」時代は終わり、現在は「2.5%」、そして近い将来「2.7%」へとハードルが上がります。これに伴い、雇用義務が発生する企業の従業員数(ボーダーライン)も引き下げられています。
「義務のボーダーライン」(40人、37.5人)「37.5人以上」への拡大が中小企業にとって「時限爆弾」である理由 を深掘りしたい場合は、関連記事:「法定雇用率とは?簡単にわかりやすく解説!」でも記載されています。
「法定雇用率とは何か」「なぜ義務なのか」という基本的な定義している記事となります。
| 時期 | 民間企業の法定雇用率 | 雇用義務が発生する従業員数 | 状況 |
|---|---|---|---|
| ~2024年3月31日 | 2.3% | 43.5人以上 | 過去 |
| 2024年4月1日 ~ | 2.5% | 40.0人以上 | 現在適用中 |
| 2026年7月1日 ~ | 2.7% | 37.5人以上 | 確定未来 |
【重要】 現在、従業員数が40人以上の企業には、障害者を1人以上雇用する義務があります。さらに2026年7月からは37.5人(実務上は38人)以上の企業も対象となります。
「うちは30人台だからまだ大丈夫」と思っている企業も、わずか数名の増員で義務対象になる可能性があるため、早急な準備が必要です。
「従業員数(常用労働者数)」の正しい数え方
法定雇用率の計算の基礎となる「分母(従業員数)」の数え方には、独自のルールがあります。ここを間違えると、必要人数の計算がすべて狂ってしまいます。
| 雇用区分 | 週所定労働時間 | カウント方法 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 常用労働者 | 30時間以上 | 1人 | 正社員・フルタイム契約社員など |
| 短時間労働者 | 20時間~30時間 | 0.5人 | パート・アルバイトなど |
| 対象外 | 20時間未満 | 0人 | カウントしません |
【よくある疑問:派遣社員やパート・アルバイトは?】
- 派遣社員: 派遣元の企業でカウントします。派遣先(受け入れ企業)の人数には含めません。
- パート・アルバイト: 上記の労働時間(週20時間以上)かつ「1年以上雇用される見込み」があれば、カウントに含める必要があります。
必要な障害者数(法定雇用障害者数)の計算式とシミュレーション
自社が何人の障害者を雇わなければならないかは、以下の計算式で算出します。

【シミュレーション】法改正で必要人数はどう変わる?
従業員数が変わらなくても、**法定雇用率の変更だけで必要な人数が増える(カットオフ値を超える)**ケースがあります。以下は従業員112名の企業の例です。
| 時期 | 法定雇用率 | 計算式 | 必要人数 |
|---|---|---|---|
| 2024年4月~ | 2.5% | 112 × 0.025 = 2.8 | 2名 (2.8→切り捨て2) |
| 2026年7月~ | 2.7% | 112 × 0.027 = 3.024 | 3名 (3.02→切り捨て3) |
このように、2026年に向けて「プラス1名」の採用計画が必要になります。小数点第1位の数字が重要になるため、エクセル等で厳密に管理することをお勧めします。
【障害者雇用 条件 等級・カウント 条件】手帳と算定ルール
「障害者雇用 条件 手帳」「障害者雇用 条件 等級」についての詳細解説です。「誰を採用すれば、何カウントになるのか」を正確に把握しましょう。
原則:手帳がなければカウントされない
法定雇用率に算定するためには、以下のいずれかの手帳を所持していることが絶対条件です。
| 手帳の種類 | 対象となる障害 | 等級の概要 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 肢体不自由、視覚・聴覚障害、内部障害など | 1級(重度)~6級まで。 |
| 療育手帳 | 知的障害 | 自治体により判定基準が異なる(A判定=重度、B判定=中軽度など)。 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 統合失調症、うつ病、てんかん、発達障害など | 1級(重度)~3級まで。有効期限(2年)があり更新が必要。 |
【注意点】 医師の診断書があっても、手帳交付前であれば法定雇用率のカウント対象外(0人)となります。採用選考時には必ず手帳の有無と等級、有効期限を確認してください。
重度障害者のダブルカウント特例
障害の程度(等級)によって、1人の雇用で「2人分」とみなされる特例があります。これを活用することで、少ない人数で雇用率を達成することも可能です。
| 障害区分 | 1人分のカウント数(週30h以上の場合) |
|---|---|
| 重度身体障害者 (1・2級) | 2.0人分 (ダブルカウント) |
| 重度知的障害者 (A判定) | 2.0人分 (ダブルカウント) |
| 精神障害者 | 1.0人分 (※現在は短時間労働でも1.0とする特例あり) |
| 上記以外の障害者 | 1.0人分 |
※精神障害者にはダブルカウント制度はありませんが、後述する「短時間労働の特例」で優遇されています。
【障害者雇用 条件 企業】2025年4月の激震「除外率」の引き下げ
特定の業界(建設、物流、医療など)にとって、法定雇用率アップ以上に影響が大きいのが「除外率の引き下げ」です。
5.1 除外率制度の縮小スケジュール
除外率とは、障害者の就業が困難と認められる業種について、雇用義務のある労働者数を減らす(除外する)制度です。しかし、2025年4月1日より、現在設定されているすべての除外率設定業種において、一律10ポイント引き下げられます。
| 業種 | 現行の除外率 | 2025年4月以降 |
|---|---|---|
| 建設業 | 20% | 10% |
| 道路貨物運送業 | 30% | 20% |
| 医療業 | 20% | 10% |
| 小学校・幼稚園等 | 40% | 30% |
5.2 企業へのインパクトと対策
除外率が下がるということは、計算の分母となる「従業員数」が増えることを意味します。 例えば、従業員1000人の建設会社(除外率20%→10%)の場合、計算上の従業員数が800人から900人に増えます。 従業員数が一切増えていなくても、必要な障害者数が自動的に数名増えることになります。
【対策】
- 事務部門への配置転換: 現場業務が難しくても、本社管理部門や営業事務などでの採用枠を広げる。
- サテライトオフィスの活用: 外部のサテライトオフィスサービスを利用し、身体的負担の少ない環境で働いてもらう。
【障害者雇用 助成金・補助金 条件】お金のメリット・デメリット
「障害者雇用 助成金 条件」も重要な検索意図です。コンプライアンスだけでなく、キャッシュフローの観点からも制度を理解しましょう。助成金は「知っているかどうか」で数百万の差がつきます。
6.1 納付金と調整金(ペナルティとインセンティブ)
常用労働者100人超の企業には、以下の制度が適用されます。
| 制度名 | 対象 | 金額(月額) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 障害者雇用納付金 | 未達成企業 | 50,000円 / 人 | 不足1人あたり徴収。罰金ではなく調整金の財源。 |
| 障害者雇用調整金 | 達成企業 | 29,000円 / 人 | 超過1人あたり支給。支給制限あり。 |
| 報奨金 | 達成企業 (100人以下) | 21,000円 / 人 | 小規模企業向けのインセンティブ。 |
6.2 活用すべき主な助成金一覧と申請のポイント
採用活動とセットで検討すべき代表的な助成金です。これらは「自動的に振り込まれる」ものではなく、事前の計画と申請が必要です。
| 助成金名 | 対象・特徴 | 最大支給額(中小企業) | 申請のコツ |
|---|---|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | ハローワーク等の紹介で継続雇用する場合 | 240万円 (重度等)120万円 (重度以外) | 必ず採用前にハローワーク等からの紹介状をもらうこと。直接応募は対象外。 |
| トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース) | 3ヶ月程度の試行雇用を行う場合 | 月額4万円 (最長12ヶ月) | 精神障害者の場合、最大12ヶ月まで期間延長が可能で、定着支援に役立つ。 |
| 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | 手帳なしでもOK。診断書等がありハローワーク紹介 | 120万円 | 手帳取得に抵抗がある方や申請中の方を採用する場合に有効。 |
| 障害者介助等助成金 | 職場介助者や手話通訳者の配置、設備購入 | 費用の3/4など | スロープ設置や専用ソフト購入など、環境整備に活用できる。 |
現場で求められる「受かりやすい条件」と採用戦略
最後に、制度上の条件ではなく、実際の採用現場で求められる「実質的な条件」と、企業が取るべきアクションプランをまとめます。
7.1 企業が重視する「受かりやすい人」の3条件
求職者側の「受かりやすい人は?」という疑問に対する答えは明確です。採用面接では以下のポイントを確認しましょう。
| 条件 | チェックポイント | 企業側のメリット |
|---|---|---|
| 1. 安定した就労準備性 | ・毎日決まった時間に活動できる・通院・服薬管理ができている | 突発的な欠勤リスクが低く、業務を任せやすい。 |
| 2. 自己理解と発信 | ・自分の障害特性を理解している・必要な配慮を具体的に言える | 配慮のミスマッチを防ぎ、マネジメントコストが下がる。 |
| 3. 支援機関との連携 | ・就労移行支援等のバックアップがある・トラブル時の相談先がある | 定着支援を外部機関と連携でき、人事の負担が減る。 |
7.2 採用ルート別の特徴比較
| ルート | コスト | 特徴 | おすすめのケース |
|---|---|---|---|
| ハローワーク | 無料 | 母集団は最大。スキルは玉石混交。 | コストを抑えたい、助成金を活用したい場合。 |
| 就労移行支援事業所 | 無料 | 職業訓練済みで準備性が高い。 | 定着率重視、実習を経て採用したい場合。 |
| 人材紹介エージェント | 有料 | 成果報酬型。即戦力・専門スキル人材。 | 急募、特定スキルが必要な場合。 |
| 特別支援学校 | 無料 | 新卒採用。実習前提で素直な人材。 | 一から育成したい場合。 |
7.3 企業の人事・経営者が今すぐやるべきTODOリスト
現状分析フェーズ
- [ ] 自社の「常時雇用労働者数」を正確に計算したか?(派遣やパートのカウント漏れはないか?)
- [ ] 2026年までの法定雇用率引き上げ(2.5%→2.7%)を見据えた必要人数を把握しているか?
- [ ] (該当業種のみ)2025年4月の「除外率引き下げ」による不足人数を試算したか?
採用計画フェーズ
- [ ] 「週10時間~20時間」の特定短時間労働者の活用を検討したか?(精神障害者の切り出し業務など)
- [ ] 「手帳あり」だけでなく、助成金対象となる「手帳なし(発達障害等)」の人材も視野に入れているか?
- [ ] 業務の切り出し(RPA監視、データ入力、清掃、軽作業など)を行い、ハローワークへ求人を出せる状態にしたか?
障害者雇用 条件:関連するよくある質問(FAQ)
- Q障害者雇用の最低勤務時間は何時間ですか?
- A
法律上の最低時間は決まっていませんが、雇用率にカウントできる最低ラインは「週10時間以上」(精神・重度身体・重度知的のみ)です。
それ以外の方は週20時間以上が必要です。求人票では「週20時間以上」が一般的ですが、今後は「週10時間〜」の求人も増えていくでしょう。
- Q精神障害者を週20時間で雇うと、いつまで1人分としてカウントされますか?
- A
現在は「当分の間」特例措置が延長されており、週20時間以上30時間未満でも「1.0人」としてカウント可能です(通常は0.5人)。終了時期は未定ですが、少なくともここ数年は続く見込みです。ただし、毎年の法改正情報の確認は必須です。
- Q従業員40人未満の会社ですが、障害者雇用は関係ないですか?
- A
現在は義務化対象外ですが、2026年7月からは「37.5人以上」に対象が拡大されます。
また、義務対象外でも障害者を雇用すれば「報奨金」や各種助成金の対象となり、社会的信用も高まるため、早期の取り組みが推奨されます。
障害者雇用 条件:「DXダイバーシティLLP」の仕組み

この仕組みは、企業と障がい者、双方にメリットがある画期的なモデルです。最大の特徴は、自社で直接雇用やマネジメントをするのが難しい場合でも、LLP(有限責任事業組合)を通じて法定雇用率を達成できる点にあります。
「DXダイバーシティLLP」の仕組み(どうやって活用する?)
この仕組みは、企業様と障がい者、双方にメリットがある画期的なモデルです。
【活用の5ステップ】
| ステップ | アクション | 内容 |
|---|---|---|
| Step 1 | 企業がLLPに参加 | 企業が「DXダイバーシティLLP」に組合員として出資・参加します。 |
| Step 2 | DX業務を委託 | 企業は自社で困っているデジタル業務(データ入力、RPA化、Web更新、書類電子化など)をLLPに発注します。 |
| Step 3 | LLPが障がい者を雇用 | LLPは専門NPOなどと連携し、高度なITスキルを持つ障がい者(特に発達障がい者など)を雇用・育成します。 |
| Step 4 | 障がい者が業務を遂行 | LLPに所属するチームが、企業から委託されたDXプロジェクトを遂行します。 |
| Step 5 | 2つの成果を獲得 | 企業は「DXの成果物」を受け取ると同時に、LLP全体で雇用数を合算できるため「法定雇用率の達成」も実現できます。 |
なぜ選ばれるの? LLP活用4つのメリット
このモデルが「障害者雇用をどうやって進めるか」の新しい答えとなり得る理由は、以下の4つのメリットにあります。
| メリット | 解説 |
|---|---|
| 1. 法定雇用率を確実に達成 | 自社に受け入れ体制がなくても、組合に参加し業務を委託することで雇用率をクリアできます。納付金や社名公表リスクから解放されます。 |
| 2. 自社のDX・人手不足も解消 | 単なる「数合わせ」ではありません。自社では採用困難なIT・DX人材の力を借りて、業務効率化を進められます。「雇用率達成」と「業務改善」を一挙両得できます。 |
| 3. 低コスト・低リスクで開始 | 自社で特例子会社を作ったり、採用ミスマッチを起こしたりするリスクに比べ、組合参加は低リスクです。「納付金」として消えるお金を、自社のDXという「投資」に回せます。 |
| 4. 将来の「自社雇用」への布石 | 組合を通じて障がい者と働くノウハウが蓄積されます。「まずは共同雇用から始め、いずれは直接雇用へ」というステップアップの足がかりになります。 |
まとめ:【障害者雇用の条件】企業・人数・等級・カウント条件から助成金/補助金
障害者雇用の条件は、2025年から2026年にかけてかつてないほど複雑化し、厳格化します。 しかし、これを単なる「コスト増・デメリット」と捉えるのではなく、「多様な働き方(週10時間勤務など)を取り入れるチャンス」と捉える企業が勝っています。
- 人数・時間・手帳の3条件をパズルのように組み合わせる
- 助成金を賢く活用してコストを抑え、環境整備への投資に回す
- 除外率引き下げなどの法改正を先回りして予測し、早めに手を打つ
この3点を押さえ、計画的に採用活動を進めてください。法定雇用率の達成は、企業の社会的責任(CSR)であると同時に、多様な人材が活躍する強い組織を作るための第一歩です。



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