障害者雇用の進め方完全ガイド|ハローワークの流れ・等級カウント・助成金を徹底解説

障害者雇用の進め方完全ガイド|ハローワークの流れ・等級カウント・助成金を徹底解説 未分類

企業の経営課題として重要性が高まる「障害者雇用」です。

 法定雇用率の引き上げやコンプライアンスの観点から、多くの企業が対応を迫られています。しかし、人事担当者からは「何から始めればいいかわからない」「ハローワークの手続きが複雑」「手帳なしでも雇用できるのか?」といった疑問が絶えません。

本記事では、障害者雇用の基礎知識から、ハローワークを通じた採用フロー、複雑な等級カウントのルール、そして助成金を活用した戦略的な進め方までを網羅的に解説します。

障害者雇用の進め方【基礎編】|企業の義務とスケジュール

「障害者雇用」とは、障害者手帳を持つ方を対象とした採用枠での雇用のことです。これは単なるCSR(社会的責任)ではなく、法令に基づく企業の義務であり、近年では「人的資本経営」の中核をなす戦略としても位置づけられています。

法定雇用率の引き上げスケジュール

障害者雇用促進法により、従業員数が一定以上の事業主には、全従業員に対して一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇用する義務があります。この率は段階的に引き上げられています。

適用開始時期法定雇用率対象となる事業主の範囲(従業員数)
2024年(令和6年)4月~2.5%40.0人以上
2026年(令和8年)7月~2.7%37.5人以上

企業はこれを「最低ライン」と捉え、実質3.0%程度を目指すバッファを持った計画が必要です。

参考(公的機関)障害者雇用率制度について – 厚生労働省

納付金と調整金(ペナルティとインセンティブ)

法定雇用率の達成状況に応じて、以下の納付金や調整金が発生します。

制度名区分対象企業(常用労働者数)金額・内容
障害者雇用納付金ペナルティ100人超不足1人あたり 月額 50,000円 徴収
障害者雇用調整金インセンティブ100人超超過1人あたり 月額 29,000円 支給
報奨金インセンティブ100人以下超過1人あたり 月額 21,000円 支給

参考(公的機関)障害者雇用納付金制度の概要 – JEED 高齢・障害・求職者雇用支援機構

障害者雇用の進め方【Step1】手帳なし・3級・4級のカウントと等級表

「障害者雇用 4級 カウント」「身体障害 3級」「手帳なし」などの検索が多いこの分野は、担当者が最も混乱しやすいポイントです。進め方の第一歩として、誰が雇用の対象になるのか、最新ルールを把握しましょう。

「手帳なし」は障害者雇用に含まれる?

結論から言うと、原則として含まれません。

  • 手帳なしの場合: 障害者雇用枠でのカウントはできません。一般枠での採用とし、合理的配慮を行うのが通例です(申請中の場合は手帳交付後にカウント)。
  • 身体障害 3級・4級の場合: カウント対象です。ただし3級は「重度」には該当しません(1人=1カウント)。

障害者雇用の等級表とカウントルール(週10時間〜)

2024年4月より、週10時間以上20時間未満の精神障害者等も算定対象となりました。

週所定労働時間身体・知的(通常)身体・知的(重度)精神障害者特例(精神・重度身体・重度知的)
30時間以上1.0人2.0人1.0人
20時間~30時間未満0.5人1.0人1.0人(※特例)
10時間~20時間未満0人0人0人0.5人(※新設)
  • 重度身体障害者: 手帳1級・2級(または3級で重複がある場合)。2倍カウントの対象となります。
  • 重度知的障害者: 療育手帳A判定など。2倍カウントの対象です。
  • 精神障害者特例: 精神障害者は週20~30時間の短時間勤務でも「1カウント」として計算できる特例措置があります。

参考(公的機関)障害者雇用率制度の改正について(短時間労働者の算定特例など) – 厚生労働省

障害者雇用の進め方【Step2】業務切り出しと計画策定

採用活動を始める前に、受け入れ体制を整えることが定着率向上の鍵です。成功する企業の進め方には、必ず「事前の業務設計」が含まれています。

Step 2-1:社内理解と採用計画

経営層や現場に「なぜ障害者雇用が必要か」を説明し、理解を得ます。数合わせではなく、戦力として迎え入れる意識醸成が重要です。

Step 2-2:業務の創出(ジョブ・カービング)

現場の業務を洗い出し、障害者が担当できる業務を切り出します。これを「ジョブ・カービング」と呼びます。

  • 例:データ入力、書類の電子化、郵便仕分け、備品管理、清掃など。
  • ポイント:現場社員がコア業務に集中するためのサポート業務として設計すると、社内の協力が得やすくなります。

Step 2-3:労働条件の策定

切り出した業務量に応じ、フルタイムか短時間か、雇用形態を決定します。「週20時間以上」は雇用保険の加入条件でもあるため、一つの基準となります。

障害者雇用の進め方【Step3】ハローワークの流れと通さないルートの比較

「ハローワーク 障害者雇用 流れ」「ハローワークを通さない」といった検索ニーズに対応し、各ルートの特徴を比較しました。

ハローワークと「ハローワークを通さない」ルートの比較表

採用ルート特徴メリットデメリット
A. ハローワーク(公共職業安定所)最も一般的で公的なルート・無料・多くの助成金の受給要件を満たせる・スキルや特性のばらつきが大きい・スクリーニングに工数がかかる
B. 民間人材紹介(ハローワークを通さない)求人サイト・エージェント活用・ITスキルや専門職など即戦力を探しやすい・エージェントによる事前選考でマッチ度が高い・紹介手数料が発生する・一部の助成金が対象外になる可能性あり
C. 就労支援機関(就労移行・特別支援学校)実習を経て採用するルート・実習で適性を見極められるため定着率が高い・支援員のサポートが手厚い・即戦力というよりは育成枠採用が中心・採用までに時間がかかる場合がある

【ハローワーク利用の具体的な流れ】

  1. 求人申込: 障害者専門窓口へ求人票を提出(「障害者専用求人」または「一般求人」)。
  2. 紹介: ハローワーク担当者が求職者とマッチングし、紹介状を発行。
  3. 選考・採否: 書類選考・面接を実施し、結果を通知。「選考結果通知書」をハローワークへ返送。

参考(公的機関)障害者の方の雇用に向けて(事業主の方へ) – ハローワークインターネットサービス

障害者雇用の進め方【Step4】面接・選考とNG質問

「障害者雇用でNGな質問は?」という懸念に対し、コンプライアンスを守った選考基準を提示します。

受かりやすい人の特徴

企業が見ているのは「自身の障害特性を理解し、対処法を持っているか」です。

  • 必要な配慮を具体的に説明できる(「マニュアルがあればできます」など)。
  • 勤怠が安定している(通院や体調管理ができている)。

面接でのNG質問と推奨される聞き方

障害者差別解消法やプライバシー保護の観点から、業務に関係のない質問は避け、配慮事項の確認に留めます。

区分質問例意図・ポイント
NG「病名や原因を詳しく教えてください」「治る見込みはありますか?」プライバシーの侵害。業務遂行に直接関係ない医療情報は聞かない。
NG「家族に障害者はいますか?」「宗教や支持政党は?」職業差別につながる恐れがある質問。本人に責任のない事項はNG。
OK ⭕️「業務を行う上で、どのような配慮が必要ですか?」「苦手な作業や環境(音・光など)はありますか?」合理的配慮の確認。働くための環境調整に必要な情報を聞く。
OK ⭕️「体調が悪くなる予兆はありますか?」「その際、会社側にはどのような対応を望みますか?」安定就労のための確認。休憩や服薬などの具体的対処法を共有する。

参考(公的機関)合理的配慮の提供が義務化されました(リーフレット) – 内閣府

障害者雇用の進め方【Step5】手続きと保険加入条件

「障害者雇用保険 加入 条件」や「障害者雇用 手続き」について解説します。

障害者雇用における保険加入条件

障害者であっても、基本的には一般従業員と同じ加入ルールが適用されますが、特例もあります。

保険種類加入要件(週所定労働時間)備考
雇用保険週20時間以上31日以上の雇用見込みが必要。※週10~20時間の特例雇用は対象外
社会保険(健康・年金)週30時間以上(または条件により週20時間以上)従業員数等の条件(特定適用事業所など)により、週20時間以上でも加入義務が発生する場合あり。

助成金の手続き

採用決定後、条件を満たす場合は速やかに申請を行います。

助成金名概要・対象支給額目安(中小企業)
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)ハローワーク等の紹介で雇い入れ、継続雇用する場合最大 240万円(重度・精神障害者を週30h以上雇用等の場合)
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)経験不足等を補うため、最大3ヶ月(精神は最大6ヶ月等)試行雇用する場合月額 最大4万円(精神障害者は最大8万円)

参考(公的機関)

障害者雇用の進め方に関するよくある質問(FAQ)

最後に、関連する質問として多く寄せられる疑問に回答します。

Q
障害者雇用を進めるためにはどうしたらよいですか?
A

まず自社の「不足人数」を把握し、経営層の合意形成を得てください。次に「業務の切り出し」を行い、ハローワークや民間エージェントに求人を出します。いきなり正社員ではなく、トライアル雇用やパートから始めるのも有効です。

Q
「障害者雇用で働くには」何が必要ですか?(求職者視点)たらよいですか?
A

「障害者手帳(身体・療育・精神)」が必要です。手帳がない場合、障害者雇用枠での応募はできません(一般枠での応募となります)。まずは自治体で手帳の取得手続きを行ってください。

Q
障害者雇用に受かりやすい人は?
A

自分の障害について正しく理解し、「何ができて、どのような配慮が必要か」を企業に伝えられる人です。また、就労移行支援事業所などに通い、基本的なビジネスマナーや勤怠の安定性が備わっている方は評価が高い傾向にあります。

Q
障害者雇用でNGな質問は?
A

病気の原因、詳細な治療内容、家族構成など、業務遂行に直接関係のないプライバシーに関わる質問はNGです。「業務上の配慮事項」を確認する形に留めましょう。

まとめ:障害者雇用の進め方完全ガイド|ハローワークの流れ・等級カウント・助成金

本記事では、障害者雇用の進め方について、ハローワークの活用から助成金申請まで解説してきました。最後に、数多くの企業コンサルティングを行ってきた立場から、本音をお伝えします。

障害者雇用は、単なる事務手続きではありません。

企業側にとっても、不適切な対応は「離職率の悪化」だけでなく、労働基準監督署の是正勧告や、差別禁止法違反による「社会的信用の失墜」という重大なリスクを孕んでいます。法定雇用率の未達成による納付金コストだけでなく、コンプライアンス違反によるブランド毀損は、計り知れない損失となります。

多くの企業を見てきましたが、「数合わせ」で採用した企業は、ほぼ例外なく失敗しています。 一方で成功している企業は、障害者を「守るべき弱者」としてではなく、「戦力となる多様な個性」として捉え、本気で業務設計(ジョブ・カービング)を行っています。「何ができないか」ではなく「何なら任せられるか」を追求する姿勢。これこそが、定着率を高め、結果として企業の生産性を向上させる唯一の道です。

2026年には法定雇用率が2.7%へ引き上げられます。

 労働人口が減少する日本において、「障害者雇用を制する企業は、人材戦略を制する」と言っても過言ではありません。ぜひ、本記事を参考に、貴社の持続的な成長につながる障害者雇用を実現してください。

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