日本の労働市場は今、未曾有の転換期を迎えています。生産年齢人口の減少が加速する中で、企業の持続的成長を支える新たな労働力の確保は、経営における最重要課題の一つです。
とりわけ障害者雇用領域においては、法定雇用率の段階的な引き上げ(2024年に2.5%、2026年に2.7%)という強力な外圧に加え、多様な働き方を求める求職者のニーズという内圧が同時に作用しています。従来の「週30時間以上のフルタイム勤務」「オフィスへの毎日通勤」を前提とした画一的な雇用モデルは、もはや限界を迎えつつあります。
こうした構造変化の只中で、最大の打開策として浮上しているのが「短時間勤務」の活用です。
「週20時間未満でも雇用率としてカウントできるのか?」 「いつから制度が変わったのか?」 「給料や助成金、社会保険はどうなる?」
本記事では、2025年の最新制度に基づき、人事責任者や経営者が抱くこれらの疑問にすべて答えます。週10時間・20時間・30時間の違いから、複雑なカウント方法、求人動向、そして業務の切り出し方までを、約5,000文字で網羅的に徹底解説します。
- 【いつから?】障害者雇用の短時間勤務(週10時間・20時間)の法改正
- 【カウント表】障害者雇用は「短時間」が鍵!週10時間・20時間・30時間の計算方法
- 【求人と給料】障害者雇用の短時間求人は?完全在宅や週20時間未満の働き方・相場
- 【助成金】障害雇用短時間トライアル雇用と活用メリット
- 障害者雇用30時間以上(フルタイム)や短時間正社員との違い
- 障害者雇用でも短時間勤務やフリーランスでも技術がある方にも対応した働き方ができる
- よくある質問(FAQ):障害者雇用は「短時間」週10時間・20時間・30時間のカウントは?いつから?を解決
- まとめ:障害者雇用は「短時間」が鍵!週10時間・20時間・30時間のカウントは?いつから?求人
【いつから?】障害者雇用の短時間勤務(週10時間・20時間)の法改正

まず最初に、最も検索ニーズが高く、多くの担当者が混乱している「制度変更の時期」と「新しい枠組み」について、背景を含めて詳細に解説します。
週10時間以上20時間未満(特定短時間)は2024年4月から開始
「障害者雇用 10時間 いつから」という検索が多くされていますが、この制度(特定短時間労働者)は2024年(令和6年)4月1日より既に開始され、施行されています。
なぜ今、「週10時間」なのか?
これまで、日本の障害者雇用制度では「週20時間」が大きな壁でした。
週20時間未満の就労は、どんなに能力があっても、どんなに成果を出しても、法定雇用率の算定対象外(0カウント)とされてきたのです。
しかし、精神障害者や重度の身体障害者の中には、「長時間は働けないが、短時間なら高い能力を発揮できる」という人材が数多く眠っています。一方で企業側は、法定雇用率の引き上げにより、採用難易度が極限まで高まっていました。
この需給のミスマッチを解消するために新設されたのが、「特定短時間労働者(週10時間以上20時間未満)」という区分です。
これにより、企業はこれまでリーチできなかった層を戦力化し、未達成リスクを回避する新たな選択肢を手に入れました。基礎知識からしっかり確認したい方は「法定雇用率とは?簡単にわかりやすく解説!」の記事もあわせてご覧ください。
参考:厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」
障害者雇用における「短時間」の定義(10時間・20時間)
現在、障害者雇用における「短時間勤務」は、以下の2つに明確に分類されています。この違いを理解することが、法改正対応の第一歩です。
| 区分 | 週労働時間 | 概要・対象 | 戦略的意義 |
|---|---|---|---|
| 特定短時間労働者 | 10時間以上20時間未満 | 【新設】精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者に限定。 | スモールステップでの雇用開始が可能。採用母集団形成に劇的な効果をもたらす。 |
| 短時間労働者 | 20時間以上30時間未満 | パートタイムやアルバイトの主要ゾーン。 | 精神障害者の場合、特例措置によりフルタイムと同等の評価(1カウント)が得られるため、現在最も採用 |
【カウント表】障害者雇用は「短時間」が鍵!週10時間・20時間・30時間の計算方法

実務担当者が最も神経を使い、かつ計算ミスが許されないのが「雇用率算定(カウント)」です。ここでは、全てのパターンを網羅したマトリクスと、具体的な計算シミュレーションを提示します。
障害種別×労働時間のカウント完全早見表
この表は、採用計画を立てる際の「基本台帳」としてご活用ください。
| 障害種別 | 週30時間以上(通常労働者) | 週20時間~30時間未満(短時間労働者) | 週10時間~20時間未満(特定短時間労働者) |
|---|---|---|---|
| 身体・知的障害者 | 1 | 0.5 | 0 (対象外) |
| 重度 身体・知的障害者 | 2 (ダブルカウント) | 1 (特例) | 0.5 (新設) |
| 精神障害者 | 1 | 1 (特例措置) | 0.5 (新設) |
ルール1:精神障害者は週20時間台でも「1カウント」のボーナスタイム
本来、週30時間未満の短時間労働者は「0.5カウント」となるのが原則です。
しかし、精神障害者に限り、当分の間は週20時間以上30時間未満であっても「1人分」として算定される特例措置が適用されています。
これは、「精神障害者は疲れやすく長時間の定着が難しい」という特性への配慮と、雇用促進のインセンティブです。企業にとっては、フルタイム雇用よりもハードルが低い条件で、雇用率への貢献度を最大化できるため、「週20時間の精神障害者雇用」**は現在のトレンドとなっています。
ルール2:週10時間以上でカウントされるのは「精神」と「重度」のみ
ここが最大の注意点です。新設された「週10時間以上20時間未満(0.5カウント)」の対象は、精神障害者および重度の身体・知的障害者に限定されています。
例えば、軽度の身体障害者(内部障害や軽度の肢体不自由など)の方を週15時間で雇用しても、法定雇用率上は「0人」となります。面接時には障害者手帳の種別と等級を必ず確認し、どの区分に該当するかを慎重に判断する必要があります。
ルール3:30時間以上はダブルカウントのチャンス
重度の身体障害者や重度の知的障害者を、週30時間以上のフルタイムで雇用した場合のみ、1人で「2カウント」となります。バリアフリー環境が整っている企業や、テレワークで身体的負担を軽減できる企業であれば、積極的に狙いたい採用区分です。
【シミュレーション】従業員1,000人の企業の場合
| パターン | 雇用戦略 | 人員構成例 | 合計人数 | 獲得ポイント | 採用難易度 |
|---|---|---|---|---|---|
| パターンA(従来型) | 全員フルタイム採用(身体・軽度中心) | 身体障害者(軽度) 27名 | 27名 | 27.0pt | 高 |
| パターンB(短時間活用) | ハイブリッド採用 | ①フルタイム身体:10名 (10pt)②週20h精神:15名 (15pt ※特例)③週15h重度身体:4名 (2pt ※特定) | 29名 | 27.0pt | 低 |
パターンBのように、短時間勤務や在宅勤務を組み合わせることで、1人あたりの負担を減らしながら、全体として目標を達成するポートフォリオを組むことが、現代の成功セオリーです。
【求人と給料】障害者雇用の短時間求人は?完全在宅や週20時間未満の働き方・相場

制度の次に実務担当者が知りたいのは、実際の「働き方」や「お金(コスト)」の話です。「障害者雇用 求人 短時間」「給料」といった検索意図に応え、現場のリアルを解説します。
「完全在宅×週10時間」の求人が急増する理由と業務事例
現在、「障害者雇用 在宅 週10時間」の求人が急増しています。これは、通勤が困難な重度身体障害者や、対人関係や外出に不安のある精神障害者にとって、在宅勤務(テレワーク)こそが能力を発揮できる唯一無二の環境だからです。
職種別:短時間・在宅で任せられる業務(ジョブ・カービング)
「週10時間で何をしてもらうの?」という疑問に対する答えは、業務の「切り出し(マイクロタスク化)」にあります。
| 職種カテゴリ | 具体的な業務切り出し例 |
|---|---|
| IT・Web系(スキル重視) | Webサイト更新・修正作業、バナー作成、画像のトリミング・加工、システム開発のデバッグ・テスト仕様書作成、SNS(XやInstagram)の投稿作成・運用代行 |
| 事務・バックオフィス系(定型業務) | 名刺データの入力、顧客リストのクリーニング、会議の議事録作成(音声データの文字起こし)、経費精算の領収書チェック(電子データ)、競合他社のリサーチ・データ収集 |
企業側のメリット
- 全国採用が可能: 本社が東京にあっても、北海道や沖縄の優秀な人材を採用できます。地域による最低賃金の差を考慮したコスト戦略も可能です。
- オフィスコストの削減: 物理的なデスクや車椅子用トイレの改修工事が不要になります。参考:厚生労働省「障害者のテレワーク雇用に係る留意事項等について」
週20時間未満の給料相場と障害年金の関係
短時間勤務の給料は、基本的に最低賃金(時給1,000円~1,200円程度)ベースで計算されます。
| 週所定労働時間 | 月間労働時間(目安) | 月収目安(最低賃金ベース) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 週10時間 | 約43時間 | 4万 ~ 5万円 | 障害年金との併用で生活安定を図る層が多い |
| 週20時間 | 約86時間 | 9万 ~ 10万円 | 扶養内(103万・130万の壁)に収めたい層に人気 |
一見すると少ないように見えますが、ここで重要なのが「障害年金」の存在です。 多くの求職者は、障害基礎年金(2級で月約6.8万円)や障害厚生年金を受給しています。彼らにとって、フルタイムで働いて「就労能力あり」とみなされ、年金の等級が下がったり支給停止になったりすることは死活問題です。
そのため、「年金を受給しながら、扶養内(年収103万・130万の壁)で、無理なく社会参加したい」というニーズは極めて強く、「週20時間未満」「週20時間程度」の求人は、実は最も応募が集まりやすい人気の条件なのです。企業側も、「安く買い叩く」のではなく、「求職者のライフプランに合わせた最適な労働時間を提供する」という姿勢で提示することが重要です。
【助成金】障害雇用短時間トライアル雇用と活用メリット
障害者雇用にはコストがかかりますが、それを補うための国の助成金制度が充実しています。特に短時間雇用においては、以下の制度が強力な武器となります。
トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)
精神障害者や発達障害者を対象に、週10時間~20時間の勤務からスタートし、徐々に時間を延ばしていくことを支援する制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 精神障害者、発達障害者 |
| 期間 | 最長12ヶ月(通常のトライアル雇用は3ヶ月だが、本コースは長期) |
| 支給額 | 対象者1人につき月額最大4万円(最大合計48万円) |
| メリット | ミスマッチの防止: 1年かけてじっくり適性を見極められる。スモールステップ: いきなり週20時間はハードルが高い方でも、週10時間からなら始めやすい。 |
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
ローワーク等の紹介で継続して雇用する場合のメインとなる助成金です。
- 短時間労働者(週20時間以上30時間未満)の場合:
- 中小企業:80万円(2年間で分割支給)
- 大企業:30万円
- 特定短時間労働者(週10時間以上20時間未満)の場合:
- 現状の制度では、本助成金の対象となるには原則として「雇用保険の被保険者」である必要があります。週20時間未満の場合、雇用保険の適用拡大(2028年度目途の議論あり)の動向や、自治体独自の助成制度を確認する必要があります。
- ※ただし、特定短時間労働者の雇用に伴う新たな特例給付金や調整金の仕組み(納付金制度内)も整備されつつあるため、最新情報を常にチェックしましょう。
- 参考:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
障害者雇用30時間以上(フルタイム)や短時間正社員との違い
短時間正社員という「第三の選択肢」
「短時間勤務=パート・アルバイト(非正規)」という図式は崩れつつあります。多くの先進企業が**「短時間正社員」**制度を導入しています。
- 定義: フルタイム正社員と比較して所定労働時間は短い(例:週20時間、週25時間など)が、期間の定めのない労働契約(無期雇用)を結び、基本給や賞与、退職金の算定方法などが正社員と同等である身分。
| 視点 | メリット |
|---|---|
| 企業側 | 優秀な人材の囲い込み、離職防止、帰属意識の向上。 |
| 労働者側 | 雇用の安定、キャリア形成の展望、社会的信用(住宅ローン審査等)の向上。 |
運用事例: 最初はパートタイム(有期)で採用し、勤続1年で「短時間正社員」へ登用試験を実施。その後、体調が安定すればフルタイム正社員へ転換、あるいは管理職への登用も行うなど、柔軟なキャリアパスを提示することで、定着率が劇的に向上します。
参考:厚生労働省「多様な正社員(短時間正社員等)の導入・運用支援」
障害者雇用でも短時間勤務やフリーランスでも技術がある方にも対応した働き方ができる

ここ数年で注目されているのが、「DXダイバーシティ(DX Diversity)」という考え方です。 「障害者雇用=単純作業・低賃金」という時代は終わりを告げつつあります。
IT技術の進化とテレワークの普及により、物理的な制約があっても、高度なスキルで価値を提供できる人材が輝ける時代が到来しました。
高度なスキルを持つ人材の「隙間時間」を活用する
エンジニア、デザイナー、マーケター、データサイエンティストなど、高度な専門スキルを持ちながら、障害や病気のためにフルタイム勤務が難しい方は数多く存在します。 企業は、こうした「埋もれた才能」を週10時間~20時間の短時間雇用や、成果報酬型のフリーランス契約として活用することで、人手不足の解消とイノベーションの創出を同時に実現できます。
- 短時間雇用: 企業のコア業務(開発、デザイン等)の一部を切り出し、雇用契約を結んで担当してもらう。法定雇用率への貢献と専門業務の遂行を両立。
- フリーランス活用: プロジェクト単位やタスク単位で業務委託契約を結ぶ。雇用率にはカウントされませんが、プロフェッショナルな戦力として事業成長に直結します。
「DXダイバーシティ」が実現する新しいインクルージョン
DX(デジタルトランスフォーメーション)とダイバーシティ(多様性)を掛け合わせたこの概念は、時間や場所、障害の有無にとらわれず、テクノロジーの力で個人の能力を最大化する社会を目指しています。
「自社に合うIT人材が見つからない」「短時間でもスキルのある人を採用したい」 そう考える企業にとって、DXダイバーシティの視点を取り入れることは、競合他社との差別化につながる強力な経営戦略となります。柔軟な働き方や多様な人材活用についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ以下のサイトも参考にしてください。
よくある質問(FAQ):障害者雇用は「短時間」週10時間・20時間・30時間のカウントは?いつから?を解決
- Q障害者雇用の最低勤務時間は何時間ですか?
- A
法律上の「最低勤務時間」という定義はありません。極端な話、週1時間の雇用契約も可能です。しかし、法定雇用率にカウントするためには週10時間以上の勤務が必要です。 週10時間未満の働き方を希望される場合は、一般企業の直接雇用ではなく、就労継続支援A型・B型などの福祉的就労を利用するケースが一般的です。
- Q週20時間未満の求人はどこで探せますか?
- A
ハローワークの求人票で「週所定労働時間」の欄を確認するのが基本ですが、障害者専門の転職エージェント(dodaチャレンジ、atGPなど)に登録し、「特定短時間勤務(週10~20時間)を希望する」と伝えるのが近道です。エージェント側も、新制度に対応した非公開求人を保有しているケースが増えています。
- Q精神障害者のカウント特例はいつまでですか?
- A
現状、法文上は「当分の間」とされており、明確な終了期限(サンセット条項)は示されていません。少なくとも次回の法定雇用率引き上げ(2026年)およびその次の改定時期までは継続される公算が高いです。精神障害者の雇用状況が十分に改善されるまでは、この強力なインセンティブは維持されるでしょう。
- Q在宅勤務の場合、最低賃金はどうなりますか?
- A
原則として、「事業場の所在地」の最低賃金が適用されます。
例えば、東京本社(最賃1,163円※2024年度)が沖縄在住者(最賃952円)を在宅で雇用する場合、契約上東京本社の所属であれば、東京の最低賃金以上を支払う必要があります。ただし、現地に支店や営業所があり、そちらの所属とする場合は現地の最低賃金が適用される場合もあるため、労務管理上の所属をどうするかは事前の設計が必要です。
- Q在宅勤務の場合、最低賃金はどうなりますか?
- A
原則として、「事業場の所在地」の最低賃金が適用されます。
例えば、東京本社(最賃1,163円※2024年度)が沖縄在住者(最賃952円)を在宅で雇用する場合、契約上東京本社の所属であれば、東京の最低賃金以上を支払う必要があります。ただし、現地に支店や営業所があり、そちらの所属とする場合は現地の最低賃金が適用される場合もあるため、労務管理上の所属をどうするかは事前の設計が必要です。
まとめ:障害者雇用は「短時間」が鍵!週10時間・20時間・30時間のカウントは?いつから?求人
2025年以降、障害者雇用を成功させる企業とそうでない企業の差は、**「時間の柔軟性」**をどれだけ持てるかにかかっています。
- 週10時間~20時間(特定短時間): 精神・重度障害者の新規採用、完全在宅雇用の切り札として活用し、0.5カウントを積み上げる。
- 週20時間~30時間(短時間): 精神障害者の特例(1カウント)を最大限に活かし、定着率とパフォーマンスのバランスをとる。
- 週30時間以上(通常): 重度身体障害者のダブルカウントや、短時間正社員からのステップアップ先として設計する。
これらは単なる法定雇用率達成のための「数合わせ」ではありません。業務プロセスを徹底的に見直し(ジョブ・カービング)、誰もが働きやすい環境を整備することは、結果として全社員の生産性向上とダイバーシティ経営の実現につながります。
制度を正しく理解し、助成金を賢く活用しながら、自社に最適な「時間」のポートフォリオを構築していきましょう。今こそ、障害者雇用をコストから「投資」へと変えるタイミングです。



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