ロクイチ報告とは?書き方やいつまでや指導や義務について解説

ロクイチ報告とは?書き方やいつまでや指導や義務について解説 障害雇用・法定雇用率ブログ

「今年も例年通り提出すれば大丈夫」と思っていませんか?

2025年のロクイチ報告(障害者雇用状況報告)は、過去の常識が通用しない重要な転換点です。法定雇用率の急激な引き上げ、算定ルールの複雑化、そして厳格化する行政指導……。古い知識のままでは、思わぬ法令違反や企業名公表のリスクを招きかねません。

本記事では、多忙な人事・労務担当者様に向けて、2025年の最新ルール、複雑な計算ロジック、電子申請(e-Gov)の手順をどこよりも分かりやすく完全解説します。

「知らなかった」では済まされない実務の要諦を、この1記事でマスターし、万全の体制で報告期を迎えましょう。

ロクイチ報告とは?定義と目的

6月1日時点の雇用状況を報告する最重要業務

ロクイチ報告とは、毎年6月1日現在の企業における「障害者」および「高年齢者」の雇用状況を集計し、管轄のハローワーク(厚生労働大臣)へ報告する実務手続きの通称です。

正式名称は以下の2つを指します。

  1. 障害者雇用状況報告書(根拠法:障害者雇用促進法 第43条第7項)
  2. 高年齢者雇用状況等報告書(根拠法:高年齢者雇用安定法 第52条第1項)

実務の現場では、基準日が6月1日であることから「ロクイチ」と呼ばれています。これは単なる統計調査ではなく、企業が**法定雇用率(2025年現在は2.5%)**を遵守しているかを行政が判断するための最重要資料となります。

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なぜ提出が必要なのか?(コンプライアンスとESG)

提出されたデータは、以下の行政処分の直接的な根拠となります。

  • 障害者雇用納付金の徴収(未達成企業へのペナルティ)
  • 障害者雇用調整金の支給(達成企業へのインセンティブ)
  • 行政指導および企業名公表の判断材料

また近年では、ESG投資の観点から「人的資本経営」の指標としても注目されており、ロクイチ報告の数値は企業の社会的信用のバロメーターとなっています。

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ロクイチ報告の書き方・計算ロジックとフォーマット

ロクイチ報告の核心は、正確な「実雇用率」の計算にあります。「誰を何人としてカウントするか」というルールは複雑で、2024年の法改正でさらに細分化されました。

ステップ1:分母(常用労働者数)の確定

分母となる従業員数には、正社員だけでなく、週20時間以上働くパート・アルバイトも含まれます。

  • 週30時間以上: 1人としてカウント
  • 週20時間以上30時間未満: 0.5人としてカウント
  • ※派遣社員は派遣元でカウントするため、受入企業側では含めません。

ステップ2:分子(障害者数)のカウントマトリクス

障害者のカウントは、障害の重さと労働時間によって「ダブルカウント」などの特例が適用されます。特に新設された「特定短時間労働者」の枠組みを見落とさないようにしましょう。

障害者カウント完全早見表】

障害区分程度週30時間以上週20h〜30h未満週10h〜20h未満(2024年新設)
身体障害重度2.0 (ダブル)1.00.5
重度以外1.00.5対象外
知的障害重度2.0 (ダブル)1.00.5
重度以外1.00.5対象外
精神障害手帳所持1.01.0 (特例)0.5

ポイント:

  1. 精神障害者の特例: 週20〜30時間の短時間勤務でも、当面の間は「0.5」ではなく「1.0」としてカウントできます。
  2. 週10時間〜20時間の新設: 精神障害者、重度身体・重度知的障害者に限り、超短時間勤務でも「0.5人」として算定可能です。

ステップ3:実雇用率の計算式

上記で算出した数値を以下の式に当てはめます。

実雇用率(%) = 障害者カウント総数 ÷ (常用労働者数 - 除外率相当数) × 100

厚生労働省が配布するExcel様式(マクロ機能付き)の使用を強く推奨します。自動計算により、ケアレスミスを防ぐことができます。

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ロクイチ報告の提出方法(電子申請・e-Gov)

ロクイチ報告の提出方法(電子申請・e-Gov)

現在は、紙媒体での郵送・持参よりも電子申請(e-Gov)が主流となっています。特に多拠点展開している企業にとっては、業務効率化の切り札となります。

電子申請の3ステップフロー

  1. 事前準備(ID取得): 「GビズID」などの電子申請用アカウントを取得します。GビズIDプライムの取得には数週間かかる場合があるため、早めの準備が必要です。
  2. データ作成: 厚生労働省指定のExcelファイルにデータを入力し、保存します。
  3. 申請・送信: e-Gov(電子政府の総合窓口)にログインし、「障害者雇用状況報告」の手続きを選択。作成したExcelを添付して送信します。

注意点: 送信後に発行される「到達番号」は必ず控えてください。申請が受理されたかどうかの確認に必要となります。

ロクイチ報告はいつまで?2025年の提出期限

「ロクイチ報告 いつまで」という質問への回答は厳格に定められています。

  • 基準日: 2025年6月1日
  • 提出期限:2025年7月15日(火)
    • ※原則として毎年7月15日(土日祝の場合は翌営業日)

6月1日時点の確定データを基に、約1ヶ月半という短期間で集計・作成・提出を完了させる必要があります。遅延した場合、ハローワークからの督促対象となりますので、余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。

ロクイチ報告の指導と未達成時のリスク

ロクイチ報告の指導と未達成時のリスク

「ロクイチ報告 指導」「罰則」について懸念される担当者様も多いでしょう。ここには経済的側面と社会的側面の2つのリスクが存在します。

1. 経済的ペナルティ(障害者雇用納付金)

常用労働者100人超の企業で法定雇用率が未達成の場合、不足1人につき月額50,000円の納付金が徴収されます。

  • 例:不足4人の場合、年間240万円のコスト増となります。

2. 社会的制裁(企業名公表へのフロー)

納付金を支払えば責任免除とはなりません。改善が見られない企業には、以下の段階を経て厳格な行政指導が行われます。

  1. 雇入れ計画作成命令: 2か年計画の作成義務付け。
  2. 適正実施勧告: 計画進捗が悪い場合の警告。
  3. 特別指導: 指導期間の延長。
  4. 企業名公表: 上記を経ても改善が見られない場合、厚生労働省HP等で社名が公表されます。

企業名公表は、SNSでの拡散や不買運動、BtoB取引の停止など、計り知れないレピュテーションリスク(評判の低下)を招きます。

ロクイチ報告の義務と対象企業|2025年・2026年基準

「ロクイチ報告 義務」「対象」と検索されることが多いですが、対象範囲は法定雇用率の変動に合わせて拡大し続けています。

2025年の報告義務対象(ボーダーライン)

以下の従業員数(常用労働者数)を雇用する事業主には、報告義務が発生します。

報告書の種類対象となる企業規模(常用労働者数)備考
障害者雇用状況報告40.0人以上法定雇用率2.5%に基づく
高年齢者雇用状況報告31人以上

重要な注意点: 対象規模の企業であれば、障害者を1人も雇用していなくても「0人」として報告する法的義務があります。「対象者がいないから提出不要」という判断は法令違反となりますのでご注意ください。

【重要】2026年には「37.5人以上」へ拡大

現在は対象外の企業(従業員数38人、39人など)も、近い将来必ず対象となります。 2026年7月には法定雇用率が2.7%へ引き上げられることが決定しており、その時点での義務発生ラインは以下のように引き下げられます。

義務発生ライン = (1 ÷ 0.027)× 100 ≒ 37.5人

中小企業であっても、「ロクイチ報告」は避けて通れない全社的な経営課題となっています。

参考リンク

ロクイチ報告に関するよくある質問(FAQ)

Q
ロクイチ報告は義務ですか?
A

はい、法的義務です。 障害者雇用促進法第43条および高年齢者雇用安定法第52条に基づき、対象企業は必ず提出しなければなりません。虚偽の報告や報告を怠った場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

Q
障害者を雇用していない(0人)場合も提出が必要ですか?
A

必要です。 対象となる従業員規模(40.0人以上など)であれば、雇用障害者数が0人であっても「0人」と記入して提出する義務があります。

Q
提出を忘れた場合はどうすればよいですか?
A

速やかに所轄のハローワークへ連絡してください。 期限を過ぎてしまっても、放置するのが最もリスクが高い行為です。気づいた時点でハローワークに連絡し、指示を仰いで提出してください。遅れてでも提出することが重要です。

まとめ:ロクイチ報告とは?書き方やいつまでや指導や義務

2025年のロクイチ報告は、単なる「数字合わせ」の事務作業ではありません。それは、貴社が激変する労働市場で生き残るための「人材戦略」そのものです。

法定雇用率2.7%時代はすぐ目の前に迫っています。

今、正確な現状把握と戦略的な雇用計画に着手できるかどうかが、数年後の企業のブランド価値を決定づけます。

  • 迷わず電子申請へ移行し、業務効率化を。
  • 新設された特例制度を使いこなし、多様な人材の戦力化を。
  • そして、期限内の確実な提出で、揺るぎない社会的信用を。

法令遵守のその先へ。多様な人材が輝く強い組織づくりを、まずはこの「ロクイチ報告」から始めましょう。

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